<p data-uid="B9s36SDt" data-time="1786053300830">抱っこ紐を選ぶとき、ほとんどの親は「安全性」「使いやすさ」「デザイン」を考える。でも、「その抱っこは、子どもの発育にとって本当にいいのか?」と問い直したことのある親は、どれだけいるだろうか。</p><p data-uid="YPbvrN9F" data-time="1786053300830">「抱っこ紐を推奨しない小児科医もいます。視野が制限される、首への負担がある、という理由で」——そう語るのは、大阪・東大阪市で創業80年を迎える株式会社カワキタの代表・河北一朗さんです。</p><p data-uid="pllcuiXw" data-time="1786053300830">工場を持たないファブレス方式でモノを作り続け、売上の9割がOEM(製造受託)という企業が、なぜ自社ブランドの育児グッズで特許を取り、10年間作り続けているのか。その答えは、「一本の予期せぬテレビテロップ」から始まっていました。</p><hr data-uid="pgs25Bi9" data-time="1786053300830"><h2 data-uid="iSwnLQjw" data-time="1786053300830" id="index_iSwnLQjw">少子化でも育児グッズ市場が縮まない理由</h2><p data-uid="DwpoSg_0" data-time="1786053300830">2023年の日本の出生数は72.7万人(<a href="https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html" data-has-link="true">厚生労働省 人口動態統計</a>)。統計開始以来の最少を記録し、「少子化」はすでに社会インフラの問題になっています。</p><p data-uid="Ym9gjguF" data-time="1786053300830">しかし、育児グッズ市場は単純には縮小していません。少ない子どもに、より多くの資源と愛情が注がれるようになったからです。1人の子どもに使う育児グッズへの支出は増加傾向にあり、「子どものために良いものを選びたい」という親の意識はかつてよりも高まっています。</p><p data-uid="0Ba1BlU_" data-time="1786053300830">その変化の中で問われているのが、「本当に子どもにとって良いものとは何か」という問いです。安いから、有名だから——ではなく、科学的・哲学的な根拠のある育児用品を求める親が増えています。</p><figure data-uid="CXZnWIGk" data-time="1786053464348" data-thread="" style=""><img src="https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/91aPl639al/s-109x150_0fe6bb09-6a9a-4709-ae6a-3b533e06ae30.svg" alt="" width="627"><figcaption></figcaption></figure><p data-uid="VDWv8sbP" data-time="1786053300830"></p><hr data-uid="QgNtysA8" data-time="1786053300830"><h2 data-uid="_iNBAw9H" data-time="1786053300830" id="index__iNBAw9H">「商品化決定!」テロップが意図せず流れた夜</h2><figure data-uid="s5NeNcys" data-time="1786053449185" data-thread="" style=""><a href="https://coloroncanvas.jp/notes/kawakita-ichiro-kawakita" target="_blank" rel="noopener"><img src="https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/91aPl639al/s-1920x1080_v-frms_webp_bbdd38d4-78ef-4de4-a1bb-03732c30a453.png" alt="" width="" height=""></a><figcaption></figcaption></figure><p data-uid="rw_uhrGL" data-time="1786053300830">株式会社カワキタの自社ブランド「N/ORN(ノルン)」誕生のきっかけは、偶然でした。</p><blockquote data-uid="9JwfR6cU" data-time="1786053421249"><p data-uid="ERg3C7mi" data-time="1786053300830">「テレビの生放送中に、スタッフが誤って『商品化決定!』というテロップを流してしまったんです(笑)。それが全国に放送されてしまって、もう引くに引けなくなった。そこから本気で商品化を進めることにしました。」</p></blockquote><p data-uid="IintEvnL" data-time="1786053300830">しかし、そこから正式発売まで2年かかりました。</p><p data-uid="FYZe5V7Y" data-time="1786053300831">中小企業の連携プロジェクトとしてメンバーが集まり、2013年に開発スタート。試作と改良を繰り返し、2015年にN/ORNは産声を上げました。</p><p data-uid="un5DOohM" data-time="1786053300831">「笑い話のような始まり」が、10年続く自社ブランドになった。その背景には、テロップ一本では語り切れない、河北さんの育児グッズへの思想がありました。</p><hr data-uid="Xal2DKV7" data-time="1786053300831"><h2 data-uid="meiBsMKG" data-time="1786053300831" id="index_meiBsMKG">人間だけが持つ「歩く能力」と、それを育てるという考え方</h2><p data-uid="F8YREFdQ" data-time="1786053300831">河北さんが提唱するのが「歩育(ほいく)」という概念です。「食育」という言葉が食と健康を結びつけたように、「歩育」は歩くことと子どもの育ちを結びつけます。</p><blockquote data-uid="vovTyMS8" data-time="1786053412195"><p data-uid="0bKbm9W9" data-time="1786053300831">「人間は、地球上で唯一の完全2足歩行動物です。そして生まれてから歩けるようになるまでに1〜1.5年かかる。それだけ歩くことは、人間にとって特別な能力なんです。抱っこして一緒に歩くこと——それ自体が子どもの発育につながると考えています。」</p></blockquote><p data-uid="qIYj5FQ1" data-time="1786053300831">N/ORNが開発したのは「抱っこ紐」ではなく「抱っこバッグ」です。この分類の違いは、哲学的な違いでもあります。</p><p data-uid="AwUfS1PC" data-time="1786053300831">子どもを体に固定して拘束するのではなく、バッグのように包んで一緒に歩く——そのためのデザインが、N/ORNのプロダクトには貫かれています。</p><hr data-uid="v1CZuWIw" data-time="1786053300831"><h2 data-uid="AjrESpSd" data-time="1786053300831" id="index_AjrESpSd">日本古来の「おんぶ紐」から着想した、特許の話</h2><figure data-uid="tCQ9C_V5" data-time="1786053404664" data-thread="" style=""><img src="https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/91aPl639al/s-7952x5304_v-frms_webp_86a6ab86-e514-4da2-88fc-1da685809906.jpg" alt="" width="" height=""><figcaption></figcaption></figure><p data-uid="ECmhp4kL" data-time="1786053300831">N/ORNが取得した特許は、背中の「クロス構造」です。</p><blockquote data-uid="3PugEwU6" data-time="1786053383553"><p data-uid="FNV6fJ1t" data-time="1786053300831">「着想の原点は、日本古来のおんぶ紐のたすき掛けです。クロスさせることで重さが背中全体に分散される。特定の一点に負荷が集中しないから、長時間でも疲れにくい。日本には古くからその知恵があったんです。」</p></blockquote><p data-uid="eA6EXpLN" data-time="1786053300831"></p><p data-uid="LbCNn24C" data-time="1786053300831">現代の育児グッズは機能性を追求するあまり複雑になりすぎている、と河北さんは言います。シンプルに「人が人を運ぶ」という本質に立ち返ったとき、たすき掛けという日本の伝統的な形が最もすぐれた答えだった——。</p><p data-uid="KkciaH24" data-time="1786053300831">工場を持たないファブレス企業だからこそ、素材や製造は外部の専門家に任せ、「設計思想」と「特許」を核に据えることができました。</p><hr data-uid="XsZPY206" data-time="1786053300831"><h2 data-uid="dW_sI9Yp" data-time="1786053300831" id="index_dW_sI9Yp">「7歳になった子どもと、染みの話ができる」という価値</h2><p data-uid="VV5miWdv" data-time="1786053300831">N/ORNは「2〜3年で使い終わる」育児グッズとは少し違う存在を目指しています。</p><blockquote data-uid="y8fV0Ugi" data-time="1786053375344"><p data-uid="b7VeHNfD" data-time="1786053300831">「7歳になった子どもと、バッグに残った染みを見ながら『あれは3歳のときにフランクフルトを落として大泣きしたときの染みだね』という会話ができる。それがN/ORNが目指している価値なんです。」</p></blockquote><p data-uid="ZAnKSmHz" data-time="1786053300831">機能だけでなく、「記憶を宿す道具」であること——。少子化で1人に注がれる愛情が増している時代に、親が10年後も持ち続けたくなる育児グッズという視点は、市場のニーズとも一致しています。</p><hr data-uid="mJTXMhCa" data-time="1786053300831"><h2 data-uid="3FrvEKyY" data-time="1786053300831" id="index_3FrvEKyY">ペット市場への展開。日本の犬猫は約1,600万匹</h2><figure data-uid="f5FH22Xo" data-time="1786053496676" data-thread="" style=""><img src="https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/91aPl639al/s-2000x1334_v-frms_webp_ba4cde7a-6bed-492c-bb38-a0e047365ea7.jpg" alt="" width="" height=""><figcaption></figcaption></figure><p data-uid="jBJ5_bop" data-time="1786053300831">現在、河北さんが挑んでいるのが「N/ORN PET」のクラウドファンディングです。</p><blockquote data-uid="eneOR_xv" data-time="1786053330839"><p data-uid="jI6JgIMl" data-time="1786053300831">「展示会でN/ORNを出すたびに、ペットを連れたオーナーさんから『うちの犬にも使えないの?』という声をもらっていました。犬猫への愛情は、子育てと似ています。日本には犬猫合わせて約1,600万匹いて、ペット市場は今まさに拡大中です。」</p></blockquote><p data-uid="4rAx3WRF" data-time="1786053300831"></p><p data-uid="MCsXfSL0" data-time="1786053300831">日本ペットフード協会によれば、2023年の国内犬猫推計頭数は約1,590万頭(<a href="https://www.petfood.or.jp/topics/img/230905.pdf" data-has-link="true">日本ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査</a>)。出生数72.7万人と比べると、その規模の違いは一目瞭然です。</p><blockquote data-uid="7C0zVz3G" data-time="1786053326257"><p data-uid="KbHD1Zc0" data-time="1786053300831">「育児グッズは子どもが2〜3年で成長して卒業してしまいますが、ペット向けなら10〜15年使い続けてもらえる。それもN/ORN PETの可能性の一つです。」</p></blockquote><p data-uid="Pz6jwAXx" data-time="1786053300831"></p><p data-uid="Rr1DGLkk" data-time="1786053300831">韓国・ベトナムをはじめアジアでもペット文化が広がる中、「まず日本で実績を作ってから海外へ」という河北さんの戦略は、海外展開の布石でもあります。</p><hr data-uid="TDrHmc9X" data-time="1786053300831"><h2 data-uid="LQjVkhnV" data-time="1786053300831" id="index_LQjVkhnV">「頭の中にあるネタの1割も発信できていない」</h2><p data-uid="Vt2v1th0" data-time="1786053300831">80年の歴史を持ち、OEMで蓄積した製造知見と、10年続く自社ブランドの哲学——。これだけの資産を持ちながら、河北さんは言います。</p><blockquote data-uid="hHvxkVIc" data-time="1786053300831"><p data-uid="CYh89GsJ" data-time="1786053300831">「正直なところ、頭の中にあるネタの1割も外に発信できていないんですよ。クラウドファンディングもその一つで、思いを言葉にして届けるための場として使っています。」</p></blockquote><p data-uid="wdeJTi2o" data-time="1786053300831">工場を持たないからこそ、発信しなければ存在を知られない。河北さんが今もっとも力を入れているのは、「モノを作ること」と同じ比重で、「言葉を残すこと」です。</p><hr data-uid="0fE7FQEy" data-time="1786053300831"><p data-uid="2pzRM_eF" data-time="1786053300831"><strong>AI時代だからこそ、一次情報を残そう。</strong></p><p data-uid="yI8XH0dk" data-time="1786053300831">カラキャンは、経営者や企業の魅力を可視化するインタビューメディアです。AIはスペックをまとめることはできる。でも、テレビのテロップが予期せず流れた夜に何を感じたか——その言葉は、取材によってしか残せません。自社の哲学を、ぜひ言葉にして残しましょう。</p><p data-uid="U0YTbQpU" data-time="1786053300831">▶ <a href="https://coloroncanvas.jp/contact" data-has-link="true">カラキャンへのお問い合わせはこちら</a></p><hr data-uid="QKBbAKMD" data-time="1786053300831"><p data-uid="pnrAPTY0" data-time="1786053300831">▶ <a href="https://coloroncanvas.jp/interview/kawakita-ichiro" data-has-link="true">河北一朗さん(株式会社カワキタ)の取材記事はこちら</a></p><hr data-uid="5lDo_NnH" data-time="1786053300832"><p data-uid="D7zVP6Di" data-time="1786053300832"><em>出典:</em><a href="https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html" data-has-link="true"><em>厚生労働省 人口動態統計(2023年)</em></a><em> / </em><a href="https://www.petfood.or.jp/topics/img/230905.pdf" data-has-link="true"><em>日本ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査(2023年)</em></a></p>